本日の静岡新聞や各スポーツ紙がFW大前元紀の大宮アルディージャへの完全移籍を一斉に報じました。
本日中にも公式に発表されると言われています。
公式サイトでも発表されました。
大前元紀選手 大宮アルディージャへ完全移籍決定のお知らせ(清水公式)
http://www.s-pulse.co.jp/news/detail/35442/
【大前元紀選手コメント】
『エスパルスでは、ドイツに行っていたときも含めて9年間お世話になりました。応援いただいた皆さんの前で最後に挨拶できなかったことが残念です。言葉で全て言い尽くすことはできないですが、これまでエスパルスでずっとプレーしたいと思ってきましたし、他のチームに移籍するとは思いませんでした。重みのあるエスパルスの10番を着けさせてもらい、昨シーズンはキャプテンも経験させていただき、本当に感謝しています。しかし、今回、自分がサッカー選手として何もない状況の中でどれだけできるのか、もう一回挑戦したいという気持ちが強くなり、すごく悩み苦しみましたが、今回の移籍を決断しました。この9年間でサポーターにタイトルを届けられなかったことは心残りですし、申し訳なく思っています。自分が一回りも二回りも大きくなり、またいつか、エスパルスに「元紀がいなくてはダメだ」と思ってもらえるような選手になれることが一番だと思っていますし、それを自分のモチベーションに頑張っていきたいと思います。これまでいつも大きな声援を送っていただき、本当にありがとうございました』
元紀は2008シーズンに流通経済大柏高校から清水入団。高校3年時には高円宮杯・高校総体・高校選手権の3大会で得点王になったことで鳴り物入りでの入団でした。
通常入団会見が行われる時期にU19日本代表遠征に参加が決まっていたため、高校選手権直後に単独での入団会見が行われるほどのある意味、特別待遇。
入団当初は長谷川健太監督の元なかなか出場機会はありませんでしたが、徐々に出場機会を増やし、アフシン・ゴトビ監督に代わった4年目からはリーグ戦で2年連続フル出場。
2012シーズンにはリーグ戦で二桁の13ゴールを決め、またヤマザキナビスコカップでも決勝まで進出する原動力となり、チームのエース、チームの顔となりました。
2012シーズン後のオフにドイツ・ブンデスリーガ1部のフォルトゥナ・デュッセルドルフに完全移籍。しかし、多くの出場機会が得られずにチームは2部降格。
そんな中、2013シーズン途中で中国に移籍したFWバレーの穴を埋めるため、1年の期限付き移籍という形でドイツ移籍後半年で清水に復帰。背番号50で再びゴールを量産し活躍します。
期限付き移籍から1年後の2014シーズン中に、デュッセルドルフからの完全移籍という形で清水に正式に復帰。デュッセルドルフとは契約が残っていたため、清水は移籍金を払っての「獲得」となりました。
当時の記事はこちら
FW大前元紀の完全移籍が決定!2年8ヶ月の長期契約 「なにかを成し遂げるのが今」
https://spulse.info/player/5305.html
その後はチームキャプテンを務めてきましたが、2014シーズンからはチームが下降線を辿ることになります。
2014シーズンは監督交代があり残留争い、2015シーズンはリーグ戦17位でJ2降格、2016シーズンはJ2リーグと厳しい時間を過ごしました。
本人は2014シーズンはシーズン中は隠していた怪我の影響もありリーグ戦34試合全試合出場するも6ゴールにとどまりました。2015年にはチームの不調もあり、元紀を先発から外して荒療治をすることも。また、2016シーズンには町田ゼルビア戦で負った肋骨骨折と肺挫傷により長期離脱を経験しています。
2016シーズンは怪我による途中離脱があったものの、それまではJ2リーグ得点王を狙える位置にいましたし、復帰戦でのゴールなど印象に残る活躍も多く見られました。
改めて大前元紀という選手のポテンシャルを見せつけたシーズンでした。
しかし、チームにとって必要不可欠である選手が移籍でチームから離れることに。このようなことが何故起こってしまったのでしょうか?
仲介人(代理人)の存在
サッカー選手は個人でクラブとの契約交渉をする選手もいますが、ある程度の選手になると仲介人(以前は代理人と呼ばれていた)が運営・所属するマネジメント会社に所属し、契約関係はその会社の仲介人が仲介しクラブと交渉します。
仲介人を介すことで、複雑な契約交渉を任せ、選手本人はサッカーだけに打ち込めるというメリットがありますが、逆に仲介人によるビジネス的な面での移籍交渉に巻き込まれ(仲介人は選手を動かすことでマージンを得る)、移籍が活発になるというデメリットもあります。(仲介人にはメリットですが)
もちろん、仲介人を介すことで海外に移籍したい選手のさらに複雑になる契約を任せたり、移籍先が見つからない選手の移籍先を探してきたり、といったメリットも有るのは事実です。
海外を見ると選手の移籍が活発なのはそのようなビジネスの側面が強く、選手が現役を同じクラブで終えるということは非常にまれになっています。
日本では代理人制度を2009年から採用していますが、それ以降選手の移籍が活発になってきています。
ただ、海外と日本で異なるのは、海外選手の場合は現クラブとの契約期間中でも頻繁に移籍があり、そのたびに現所属クラブに移籍金(違約金)が入るのに対し、日本の場合は現クラブとの契約が切れて移籍金が入らない段階になった選手の移籍が多いということ(いわゆる0円移籍)。
移籍する選手は仲介人の交渉により移籍先で年俸アップなどの高待遇が期待されますし、仲介人は移籍を成立させることでマージンを得ます。一方で、現クラブは残したい選手であってもその選手の契約が終わる場合、引き止めて再契約を結ぶには移籍を検討している先のクラブよりも良い条件を提示しなければならず、引き留めに失敗するとただ選手を手放すしかありません。移籍金も入ってきません。それが人気・実力がある選手であればあるほど、クラブとしては損失が大きくなります。
今回元紀が0円移籍することで、清水としては戦力としての損失もありますが、チームの顔を一人失うことになり、グッズ収入や入場料収入にもマイナスの影響があるのは確実です。
そして、なによりも純粋にチームや選手を応援してきたサポーターにとっては損失以外の何物でもありません。
元紀の所属はSARCLE
現在、元紀が所属しているマネジメント会社はSARCLEという会社になります。
こちらには多くの選手が在籍していますが、選手一覧をみると清水に関係のある選手が多く見られます。
元紀を始め、犬飼智也、本田拓也、三浦弦太、櫛引政敏、瀬沼優司、小野伸二、高木俊幸、高木善朗、長沢駿、岡根直哉…。犬飼を除きほとんどが既にいない選手かレンタルを含め移籍してしまう選手ですけれども。
また、清水関係以外の選手を見てもオナイウ阿道(浦和)、金森健志(鹿島)、長谷川アーリアジャスール(大宮)、森勇人(G大阪)といった選手を動かしており、今シーズンに関しては会社が動かしたがっていたのでは?と勘ぐってしまいます。確かに良いクラブに選手を送り込んでいるようですが。
となるとユース出身で清水に愛着があると思われる犬飼も将来危ないかも…と思わざるを得ません。あ、あと岡根さんの移籍先早く見つけてあげて下さい。
契約延長はできなかったのか?
ではクラブは元紀ともっと前に契約延長交渉はできなかったのでしょうか?
交渉自体はできますが、2016シーズン前はJ2降格ということで1年後の2017年1月で切れる契約をさらに延長する交渉を始めるのは難しかったのではないでしょうか。
J1に1年で復帰できるのかは不透明。J1復帰が決まるまではクラブも次のシーズンの予算規模をはっきりさせることは出来ませんし、そのなかで年俸交渉も含めた2017シーズン以降の契約延長の話をすることは無理だったのだと思います。
また、今回1年でJ1復帰を果たしたものの、1年間のJ2暮らしで観客の減少を始めとした売上の低下が大きいことは想像に難くなく、今オフでの年俸提示も下げざるを得なかったのかもしれません。
元紀クラスであれば一般の人から見れば十分なサラリーを貰っているのは間違いありませんが、やはり年俸が上がらない、それどころか下がるということになればそれは受け入れがたいものです。クラブの状況を理解していても、やはり評価とお金というのは結びつきますので。
金銭だけではなく、元紀は日本代表にも入りたいとか、J2では優勝したいとか、上昇志向の強い選手でもありますし、その中で清水で色々なことが頭打ちになるよりも、選手としての可能性が広がる移籍を選んだのかなと思います。
オフシーズンに入って元紀には早く動向をはっきりさせて欲しいと私を含めて多くのサポーターが願っていましたが、実は元紀の心は既に移籍で固まっていたけれども、クラブの留意が長引いてここまで伸びてしまったというのが実際なのかもしれません。
強い清水愛を持つ選手の登場と選手を引き留めることができる魅力あるクラブづくりを
サッカー選手にも移籍の自由があります。サッカー選手にも生活がありますし、お金も大事です。移籍は仕方ありません。夢や愛情だけでサッカーをやっているのではないのはわかります。
しかし、サポーターとしてはそう簡単には割り切れないもの。サポーターはクラブにも選手にも夢や愛情をもって接しているのです。
お金のこともわかっていますが、お金で買えないものもあります。チームに残って男気を見せてもらいたいというのもサポーターの気持ちです。
特に清水は主力級・エース級の人気選手の離脱が多い印象ですが、そのたびにサポーターは心を痛めています。トラウマになっています。
サポーター側の片想いで終わることなく、選手の側からも強くクラブやサポーターに想いを持ってもらえるような、そんなクラブにして行かなければなりません。
サポーターだけではなく、もっと街を挙げて盛り上げること。万万が一、またJ2に落ちてもスポンサーや観客の離脱を招かないような、そういうクラブづくりも必要だと思います。
主力やエースの離脱が続くと、今いる選手たちの中にもそういう流れが出てくるかもしれませんが…と言うよりもう出てきていますが、その流れを逆にできるような魅力のあるクラブづくりをエスパルスに関わるすべての人達でしていきたいですね。
そしてエスパルスに関わる人たちをもっと増やしていけるようにもしていきたいものです。